児童図書館から中之島の道づくりを構想してみた(前編)

 いつもながらの発作的書き込みです。

 今回は提案にトライします。提案というよりほとんど妄想に近いのでしょうが、これにはきっかけがありまして、それは9月に流れたこのニュースでした。 

安藤忠雄さん「こども本の森」建設、寄付へ 大阪中之島

(朝日新聞デジタル 2017年9月20日)
(朝日新聞デジタル 2017年9月20日)

 

 筆者は大阪中之島に児童図書館をつくるという提案のなかに「施設から自由に本を持ち出し野外で読めるようにして、子供の自由な発想を育みたい」という構想があるのを見てとてもステキだなと思ったのですが、

 

同時に、本を持ち出した子供らがそれを読む場所というのは具体的にどこなのだろうと思ったのでした。建設予定地の周囲には、子供らが安心して本を広げられるスペースが思い当たらないというか、あっても何かしら難があるような気がします。

 

取り越し苦労ならそれでいいのですが、子どもたちが図書館から借りだした本を読む場所がもしないのだとしたら、屋外読書のできる図書館の構想は、まさに絵に描いた餅となります。 

 

 なお、図書館予定地の周辺は、自転者や歩行者にとって必ずしもアクセスの良い所ではありません。ちょうどこの建設予定地の辺りは、かねてロードダイエット(注)の対象個所だと、漠然と思い描いていた所で、そこで屋外読書のスペースの確認と合わせて、周辺道路の見直しについて少し考えてみたというのが今回のエントリーです。 

 注)ロードダイエットとは、車線や車線幅など、クルマに割り振られているスペースを減らして、そのスペースを歩行者や自転車など、車以外の利用形態(交通モード)に割り振りし直すことを言います。日本語で「道路空間再配分」という言葉もあるのですが、それよりもっと自転者・歩行者側に寄った方策かと思います。念のためウィキペディアのリンクを貼っておきます Road diet(英)。 

 

 ぶっちゃけ本音はトピックスに便乗した自転車に通行空間よこせアピールですから、強引な展開に走りかねないので、自制に努めねばなりませんが、結論として、以下のような提案を想定しています。

  • 中之島通の交通静穏化を図って、歩行者の横断個所を増やす。
  • 中之島通と堺筋に安全・快適な自転車通行空間を整備する。 

 なお、大阪で児童の図書館というと、万博公園にあった府立国際児童文学館が浮かびます。橋下徹氏が府知事をしていた2009年に閉館にしてしまいました。そこへ今になって有名建築家の出してきた提案。とても結構ですが、いささか唐突感も否めないし、寄贈先は橋下氏に連なる維新系の市長が務める大阪市ですから、素直に受け止められない方も少なくないようです。筆者も思うところはありますが、当ブログの守備範囲外ですし、ここでは立ち入ることはいたしません。 

 


  図書館の建設予定地から見てみます。

 

 中之島というのは、大阪の人間には説明するまでもないですが、文字どおり川なかにできた中州です。都心にありながら視界が開けて風通しのよいエリアです。大企業や団体のオフィスが集まる所ですが、島の上流側は公園や広場が主で、建設予定地の辺り(御堂筋~堺筋)は建物と公園が隣り合う中間的な区域でしょうか。道路を挟んで真ん前に鉄道(京阪)の駅もあります。図書館を建てるのに格好の場所柄です。 

 

建設予定地の接する道は北側と南側にそれぞれあります。北側の道は、堂島川に架かる橋(鉾流橋)の南詰付近からはじまる自歩専用道が、南側は市道(中之島通)が通っています。 

北側(奥の車は公園管理関係のもの)
北側(奥の車は公園管理関係のもの)
南側
南側

北側の道(東向き)です。車通りのない幅もゆったりしている児童にもやさしい道なのですが、護岸脇の緑地には生垣が続いていて、腰を降ろせそうなところは見当たりません。

若干のベンチが、あるにはあります。 

 建設予定地北側遠景。手前辺りは、閉鎖されている道路なのか、普段は空きスペースになっている所で、椅子・テーブルを出して読書スペースにすることはできないことはないかもしれません。 

 予定地の南側。やや幅広の、街路樹が植わっている歩道です。建物は敷地いっぱいに建てられると思われるので、緑地・オープンスペースの余地はないように伺えます。

 

建設予定地の隣接地で、屋外の読書スペースに相応しそうな場所は、唯一北側で見た難波橋の手前付近にある遊休?スペース(↓ 赤枠辺り)でしょうか。 

何とかならなくもなさそうではありますが、緑と河畔の眺めに恵まれた中之島にありながらその恩恵に乏しい、ちょっと残念なロケーションです。

 

例えば下など筆者の抱くイメージです。

ニューヨーク公共図書館 ”Summer Reading”
ニューヨーク公共図書館 ”Summer Reading”

 

 報道のなかには「周囲にはバラ園や川辺を臨むテラスがあり...」という記載(日経新聞電子版)があります。安藤氏の発言かどうかは不明確ですが、ほぼそうではないかと読める記述です。

 屋外読書の構想は、館の隣接地ではなく、子供らの移動を前提にしているのでしょうか 

管理上のハードルが増しますが、子供らが移動してくれるのを前提に、想定される読書場所を推定してみます。 

 

壁面の湾曲といい、吹抜の壁への配架といい、何だか司馬遼太郎記念館の焼き直しみたいです。
壁面の湾曲といい、吹抜の壁への配架といい、何だか司馬遼太郎記念館の焼き直しみたいです。
奥の美術館との間に見える色のついた所はテラス状の階段か、植栽と通路のようなものか。
奥の美術館との間に見える色のついた所はテラス状の階段か、植栽と通路のようなものか。

 

建物の詳細は不明ですが(当然ですが)、報道にあったスケッチでは、エントランスは北側(図手前)を向いているように見えます。ですが、模型ではそうでもないような。

 

北側か南側かは判りかねますが、いちおうメインのエントランスは西寄りで北側の道にも南側の道にも出入りが可能だと仮定して、屋外読書の場所を想定してみます(仮定に仮定を重ねる苦しい展開です)。

 

屋外読書の想定場所と歩行動線
屋外読書の想定場所と歩行動線

 

二か所を想定してみました。

 

一か所はバラ園。北側の道を辿っていちばん近い公園・緑地スペースです。難波橋(堺筋)の下を潜って続いている道を進みます。矢印の先は直近のベンチのある所としました。

 

もう一か所は図書館の南側に広がる区域で、広場と緑地からなるオープンスペースです(同じく矢印の先は直近のベンチのある所)。こちらへ移動するには、横断歩道のある中央公会堂前まで大きく迂回することになります。  

 

図書館から「バラ園:A」「広場:B」への移動距離はどちらもほぼ同じ程度のようです。 

⇒バラ園 ≒160m
⇒バラ園 ≒160m
⇒広場 ≒170m
⇒広場 ≒170m

 

バラ園から見てゆきます。 

 

所々にベンチが点在していて本を読むことはできなくはなさそうです。ですが,

縦横に通路が巡らされたここは、何より散策と観賞用の"ガーデン"かと思います。

縦横に通路が巡らされています
縦横に通路が巡らされています
気持ちよさそうですが立ち入りは憚られます。
気持ちよさそうですが立ち入りは憚られます。

 

子供らは、散策者らに混じって、バラ園の所々に置かれたベンチに散らばって本を広げる様子を構想されているのでしょうか。

 

花を際立たせるためか、植え込みの周りは芝が美しく整えられています。こんなところで本を広げられたらとても喜ばれそうですが、立ち入りは可能なのでしょうか。よしんば立ち入りはできたとして、動き回る子らからデリケートな花卉類を守ることはできるのでしょうか。

 

またベンチでの読書は、読み聞かせをするお母さん方の不評を買いそうです。花が主役であるせいか、日差しを遮ってくれる樹木はごくわずかで、パラソルを出せればいいですが、見た限りではパラソルを置ける余地などほぼなさそうに思えます。

 

バラ園のもっと先には広々とした緑地が控えています。

  構想はこちらを想定しているのでしょうか? 
ですがそうすると、今度は移動距離・時間が格段に長くなってしまいます。 

 

またバラ園については、図書館から視覚的に隔てられているのも気になります。移動に時間がかかることで、子供らの読書モチベーションを少なからず損なってしまうことになりかねないし、保護者らにとっての魅力も大きく減じてしまうようにも思われるのです。  

バラ園との間の橋(右側のアーチを潜る)、図書館からは読書場所は見えない。
バラ園との間の橋(右側のアーチを潜る)、図書館からは読書場所は見えない。

 

もしかすると「これから考えるんやがな💢」とお叱りを頂戴するのではないかという感も抱きながら書いています。
ここで、想定したもう一つの場所を見てみます。図書館の南側の広場・緑地スペースです。

 


  疎らに配置された樹木とベンチに、それを囲む植栽が、ゆったりとした間隔で並んでいます。平日はサラリーマンらの恰好の休憩場所になっている気配ですが、奥の中央公会堂手前の広場を中心に、よくイベントの行われる場所です。

 

樹木が植わっているので、うまく使えば直射光を避けることができそうですし、ベンチを使わずとも臨時にテーブルなどを出せそうなゆとりのあるスペースです。少なくともバラ園に比べれば格段に使い勝手は良さそうではないでしょうか。

 

 屋外読書の場所は、子供たちのモチベーションの点でも、保護者の監督や館側の管理の点でも、建物の隣接地がベストかと、筆者は思うのですが、先に見たように建設地の周囲には適当なスペースは見当たらず。といって、エントランスに面した道から直近の緑地(バラ園)も適地とは思えない場所でした。

 

これも一つの理想イメージ NHK『この声をきみに』
これも一つの理想イメージ NHK『この声をきみに』

 

ここまでの結論として、子供らの屋外読書場所は図書館南側の広場・緑地(以下「広場」と略)を予定するのが、さしあたってベターではないかと考えます。 図書館からダイレクトに見える位置にあるのも良い点ではないでしょうか。 

「広場」側から図書館の建設地を向いた様子。
「広場」側から図書館の建設地を向いた様子。

 

そして、この「広場」を図書館の屋外読書スペースとすると、図書館と広場の間を通っている道路(中之島通)が、大きなネックとなってくるのではないかと思われます。

 

後編に続きます。